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Hayao Miyazaki: A Master's Final Stroke?

言葉にするのはちょっと恥ずかしいが と躊躇しながら
“愛の無い人生は 生きるに値しない“ と愛の大切さを讃える宮崎駿監督。 
2008年の『崖の上のポニョ』アメリカ版公開時にあったL.A.インタビューの場で “監督に取っての愛とは?”と言う質問に対する答えがこれだった。
宮崎監督の作品の中にはいろいろな形で愛が描かれている。彼の最後の長編作品となる『風立ちぬ』も愛が溢れている。宮崎作品のストーリーを繋ぎ キャラクターたちを繋ぐコアはいつも監督自身の生きる事への愛の凝視。
今回は第二次世界大戦に巻き込まれて行く前の日本が背景で 実在した零戦開発チームの主任設計者だった堀越ニ郎の半生をモデルにしたものだ。“美しい飛行機”の設計に夢をかけた生き様を 堀辰雄の結核に病む婚約者との愛を描いた同名小説 『風立ちぬ』 の世界に置いた。ラブストーリーでもあるし 夢を追い仕事に没頭し 戦争の為に人生の航路が変わって行く男の半生でもある。
『崖の上のポニョ』から5年後の新作で こちら側のジブリファンも大いに喜んでいる。
宮崎監督が長編作品からの引退する理由の一つとして 制作の合間が長くなって行く事を指摘している。“鉛筆を握っている時間が短くなリ 完成に時間がかかる。次の作品に6年 7年かかるなら完成する時には80歳になってしまう。僕の長編映画の時代は終わったと思う“と述べている。
実在した人物をベースにした作品を作った事がなかった宮崎監督が 最後の作品に堀越二郎と言う航空機設計の天才の話を告げようとしたのが興味深い。
これは監督自身のストーリーだ と言う人がいるように 主人公の生き様が監督自身と重なり合う部分がいくつかある。
監督は飛行機 特に戦闘機が大好きだと聞く。戦争大反対なのに戦闘機に惹かれる監督自身の矛盾が 主人公の堀越二郎の美しい飛行機設計にかけた人生のはずが 戦争に加担する形になってしまった運命と重なり合っている。 堀越二郎の遺族 長男の堀越雅郎(ただお)さんのこの映画に対する感想は “父は映画で描かれているほどロマンチックな男ではなかったと思うが 仕事に没頭する姿や 男の一途さは相通じるところもある” と述べている。仕事に没頭する姿は宮崎監督自身の姿でもある。引退記者会見の中で “土曜は休めるようになりたい”と言った言葉からも監督の仕事ぶりが伺える。
堀越が設計する航空機の実験と失敗、期待と落胆の繰り返しがストーリーの中に登場する。“終わりを知ってる作品を作った事がない“と言う監督の 完成までの道のりが死にものぐるいだと言う事を監督自身が繰り返し語る。寝ても覚めても飛行機の事を考えている少年だった堀越二郎と 子供の頃から絵を書き続けていた宮崎監督。
大きく違うのは 監督はアニメーターとして72歳の現在も 絵を書き続け 監督になって良かったと思った事はないが アニメーターになって良かったと心から思う と言う。
堀越二郎は敗戦と共に航空機設計が禁止になり 終戦の42歳の時から半生を賭けた美しい飛行機を作る夢は断たれてしまった。
宮崎作品らしく どんな時代の背景の中でもどんな困難を抱えていても 生きてる事は素晴らしい と語りかけてくれる。